2009年11月10日

関西人の視点と、カルロス・アギーレのことと、良い夫婦の日のパーティのこと(ちょっと長過ぎ)

  http://barbossa.com/ bar bossa 林 伸次

 妻に言わせると、私は「女性のことをよくわかっているように見せて、本当のところは全然わかっていない奴」なのだそうです。

 実際、今までの人生の中で「友人として親しくしていた女性」に突然「おもいっきり無視、絶交状態」になったことが3回あります。妻にそのことを言ったら「わかるなあ」ということでした。

 そんな私ですから、バーテンダーとして接客していて、女性のお客様を泣かせてしまったことが今までに3回あります(ゴウさんと東野さんは絶対にこんな失敗は犯していないと思います…)。

 1回目はこんな感じでした。いつもお一人で来るかなり綺麗な女性がいました。年の頃は30代前半という感じだったでしょうか。その方は綺麗なのに何故か良い恋愛に恵まれずいつも「良い出会い」を求めていました。そんな彼女がある日私にこんなことを言いました。「最近、うちの母親が『お見合いしないか』って言うんですよ。林さん、どう思います?」

 さて、質問です。みなさんならここでどう答えますか? 私はこう答えてしまいました。「ああ、お見合いですか。あれってなかなか面白い制度ですよね。昔の日本は実はお見合い結婚がほとんどだったんですよね。それはそれなりに日本の良い制度だと思いますよ。お見合い、良いじゃないですか。軽い気持ちで試してみたらどうですか?」

 って、軽い気持ちで言ったら、彼女、カウンターで泣き出しちゃったんです。「ええ〜、止めてほしかったの? そんなわかんないっすよ!」ですよね。

 2回目はこんな感じでした。あの、私、お付き合いが長いカップルに「お二人は結婚しないんですか?」と訊ねるのをライフワークとしているんですね。そういう誰かが背中をポンと押す作業ってしなきゃいけないと思っているんです。で、バーはお酒の席なので、そういうのもありかな、と思うんです。

 さて、いつもお二人で来店する、もちろん恋人達だとわかっているカップルが来ました。最近はお二人と冗談話しもするし、そろそろ言ってみようかなと思ってこう言いました。「お二人は、結婚とかそろそろ考えてはいないんですか?」

 すると、女性の方が突然泣き出しちゃったんです。「あ、ごめんなさい…、あの、あの」と私がオロオロしていると、女性がこう答えました。「私の方こそすいません。いや実は今ちょうど別れ話をしてたんです…」

 ええと、これは完全に私の失敗でした。ごめんなさいです。

 3回目はこんな感じでした。バール・ボッサ開店当時からの常連のお客様である田仲さんが新しい恋人である千春さんと来店しました。

 さて、千春さんは最近神戸から上京してきたばかりだったので、おもいっきり関西弁だったんですね。でも彼女は大きくて真っ黒な瞳が印象的で小柄で線の細い可愛い女性なんです。お仕事も子供服のデザイナーをされていて、雰囲気的にもクウネルのモデルとして出てきそうな感じなんです。

 で、私は彼女にこう言ってしまったんです。「あの、関西弁はやめて早く標準語にした方が良いと思いますよ。というのは東京の人達って、関西弁の人はお笑いの人みたいに面白いことを言う人とか、あるいはケチでガサツな人っていうイメージを持っているんですよ。でも千春さんはそんなイメージからは遠いタイプの女性なんで標準語の方が無難ですよ」。

 はい。で、その後、彼女が泣いちゃったんです。

 でも思うんですけど、「東京で関西弁をしゃべる人」に対して多くの人達が「お笑いの人」とか「ケチでガサツな人」というイメージを持っていますよね。この東京の人の感覚が偏見だというのはもちろん私もわかっています。関西に住んでいる人はほとんどが関西弁をしゃべり、その中には全然面白くない人もいれば、とてもお上品でスマートな人もいるのはもちろんなんですよね。

 もちろん東京人も「関西人にも色々ある」というのは理解しているはずなんです。でも、偏見とはわかりつつも関西人を軽蔑しているわけなんです。

 さて、私は四国の徳島という場所で生まれて育ちました。徳島はテレビは関西エリアのものを見ていますし、お好み焼きや笑いのセンスも含め、おもいっきり関西文化圏なんですね。だから私が徳島の言葉をしゃべれば東京の人は「あ、この人、関西弁だ」と感じるはずなんです。

 しかし、大阪や神戸の人からすると、徳島の関西弁はすごく訛っているように聞こえるわけです。ちょうど、群馬の人が関西に行くと「標準語の人」と思われるけど、東京から見ると群馬の人は「訛っているな」と感じるのと同じ関係なんです。

 だから私は関西文化圏で育って「関西人的メンタリティ」は理解できつつも、東京で関西弁は絶対に喋りたくないなという気持ちがとても強いんです。わかりますかね、この感じ。ちょっと違うかもしれないのですが、NYで生活している在日韓国人があんまり日本語を使いたくないような感覚と言えばいいのでしょうか。

 まあそういうわけで、私は関西文化というものに対してとても微妙な感情を持っているんですね。

 しかし、先日、ミーツ・リージョナルの別冊である「東京通本」という雑誌を手に入れて、「もしかしてこの現在の東京のイヤーな感じを救ってくれるのは関西人的感覚かも」と思ってしまったんです。

 この雑誌はただひたすら「関西人が見たところの東京の街の魅力」というのを紹介しているんですね。で、その切り取り方がいかにも関西人という切り口で、江古田とか武蔵小山とか野方とか幡ヶ谷とか、もう普通はないでしょ、というような街ばかりを紹介しているわけです。

 で、そんな街の魅力的なお店をどんどん紹介しているわけなんですが、その紹介の仕方がなんだかとても愛にあふれているんです。

 あの、例えば東京の雑誌がレトロ系の喫茶店を紹介したら「なんか昭和な感じが落ち着くよね〜。ゆるゆる〜最高〜」って感じですよね。あるいは変なメニューばっかりがある個性的なおじさんがやっている食堂なんかが紹介されたりすると「街の不思議おじさん発見(笑)」といった感じでしょうか。わかりますか、なんかこう上から目線なんですよ、東京の雑誌は。

 しかし、この雑誌の関西人の視点はとても愛があるんです。あ、ほんとにこの街とこのお店とこの人が好きなんだなと伝わってくるんです。

 まあ私が指摘するまでもなく、最近はインターネットというものが後押しして「全国民評論家時代」ですよね。それらの多くがなんだか「上から目線」でイヤだなってずっと思っていたんです。

 あのですね、私も友達と「あの作品は駄作だね」とか「あの店は不味いよ」とかは普通に言ったりするんですけど、公の場では発表しないんですよね。

 バール・ボッサにもよく来ていただいている豊崎由美さんが「誰かの作品を批判するときは、その人の作品を全部読んでいる必要がある」と言ってたそうなんですね。それ、わかるんです。批判するって結構責任重大なんですよね。例えば、日本料理を全く食べたことない外人に「●●というお店で刺身定食を食べたけどおいしくなかった」と言われると「?}じゃないですか。でも、在日20年で日本語もペラペラで毎週のように一人あたり2万円の和食を食べている外人なら批判しても納得ですよね。

 なんて言うんでしょうか。何かの作品やお店を批判するにはそれなりの責任が必要だと思うんですね。でも、なんかちょっと最近それがずれてきているように感じているんです。そしてインターネットの場合はそれを匿名でやるというのがさらに「?」なんですよね。

 そんな「なんかイヤーな感じ」をこの雑誌は吹き飛ばしてくれるんです。

 小田実の「オモニ太平記」という名著があるのはご存じですか? あ、小田実の愛のある視点は関西人ならではだったんだな、と再確認したところです。

           ●

 先日、カルロス・アギーレのことをブログで書いてから色んな人たちに「いや実は僕もカルロス・アギーレ大好きで」と言われています。あ、Vila Kitocoさん、吉本さん、CD−Rありがとうございました。

 カルロス・アギーレすごいです。誰に聞かせても「すごい!」と言います。この間はイースト・ワークスとイントキシケイトの高見さんがいる時にカルロス・アギーレをかけました。高見さん、相当酔っぱらっていたのですが、「林さん、これ誰? すごく良いんだけど」と言いました。その後、高見さんは30分くらい眠ってしまって、目を覚ました後、また「林さん、これ誰? すごく良いんだけど」と言ったんです。その時、横にはコンボピアノの渡辺琢磨さんがいたのですが、「林さん、高見さんがこんなにいうことめったにないですよ。これ、絶対にいけますよ」と言ってくれました。あ、高見さんは中島ノブユキを世に出した「日本のクリード・テイラー」と呼ばれている人です。

 カルロス・アギーレ、もうすごすぎて、ちょっとコラム書いてみました。興味ある方はどうぞです。

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 11月22日の良い夫婦の日のパーティ、まだ空きはあります。結婚している人ももちろん参加できますので。山本のりこさんの演奏、すごく良いですよ。目の前で見れるのなんてめったにないですよ。あと基本的には飲み放題ですしカイピリーニャやモヒートもありますので、「飲みたい!」という人もどうぞです。
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2009年11月05日

太陽、塩、南 〜 ホベルト・メネスカル

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 「いかにしてボサノヴァ/ブラジル音楽にたどりついたか」シリーズ、まだまだ続けます。今回は弊店barquinhoの元ネタであるボサ・スタンダード曲「O Barquinho」の作曲者ホベルト・メネスカルについて。

 ボサノヴァを聴き始めた頃アントニオ・カルロス・ジョビンは別格として、「この曲はお洒落なコード進行だな」と思う曲はほとんどがホベルト・メネスカルかマルコス・ヴァーリ作曲のものでした。そして彼ら二人の代表曲の多くはリオ・デ・ジャネイロの夏を歌ったもので、いわゆる「太陽、塩、南」路線と言われるものだったのです。(「太陽、塩、南」はメネスカルと作詞のホナルド・ボスコリの曲「Rio」に出てくる歌詞。メネスカルはボスコリと多くの名曲を作っています。)僕はいまだにボサノヴァの中でもこの路線の曲が一番好きで、ヴィニシウス・ヂ・モライスの哲学的な世界と同じくらいに、「太陽、塩、南」の青春路線は普遍的なものだと思っています。ちなみにこの路線をジャケット、収録曲、アレンジ、歌声全てでパーフェクトに表現しているアルバムはワンダ・サーの『ヴァガメンチ』でしょう。そう、このアルバムのタイトル曲「ヴァガメンチ」はメネスカル&ボスコリの曲ですし、アルバムのプロデュース自体がホベルト・メネスカルなのです。

 メネスカル&ボスコリは「O Barquinho」「Rio」「Vagamente」の他にも「Ah!, se eu pudesse」「A morte de um deus de sal」「Telefone」「Tete」「Voce」など多くの曲を作っているので、ボサノヴァのアルバム、コンピレーションCD等で知らず知らずのうちにそのメロディが無意識に耳に残っているはず。メネスカルはボサノヴァ時代以降もギタリスト、プロデューサーとして重要なアルバムに参加し、ブラジル・フィリップス社の重役まで務めていました。有名なところではエリス・レジーナの全盛期のアルバム『コモ・イ・ポルケ』や『イン・ロンドン』でギターを弾き、アレンジもしていますし、ナラ・レオンの晩年のボサノヴァ期の多くのアルバムもメネスカルとの共演で実現したものといえます。

 と、ここまでメネスカル氏の功績について書いてきましたが、近年の活動はちょっと「あれ?」という部分無きにしもあらずというのが正直なところ。彼とカルロス・リラによる映画『ディス・イズ・ボサノヴァ』については、ボサノヴァ発生時のエピソードは楽しいし、リオの雰囲気を行った事のない人に味わってもらうには良い映画と思いますが「むむ。この人選はどうかな?」的な部分も否めません。ご自身のレーベルで多数制作している「○○をボサノヴァ的にアレンジしてみましたコンピ」等についてもなんだかなぁという気が…。でも、昨年来日された時に会いに行って「バルキーニョという店をオープンしましたのでサインちょーだい!」と言ったらちゃんと快く書いてくれたし、まーいいか(笑)。

 そうそう、先日バルキーニョで中村善郎さんのライヴがありましたが、その時ちょっとおもしろいエピソードをお聞きしました。なんでも以前メネスカル氏が来日した時に、中村さんがメネスカル氏の前で「O Barquinho」を歌ったところ「いいねぇ。それはいったい誰の曲だ?」と言ったそう。その瞬間横にいたレイラ・ピニェイロが大爆笑していたらしいのですが、まんざら冗談のような雰囲気でも無かったらしいです。中村さんは「よっぽど僕の演奏が悪かったのかなぁ。そんなことは無いとは思うのだけど」とおっしゃっていましたが、まさかそんなわけないですよね。なんかその適当な感じが憎めないし、やっぱりホベルト・メネスカルの曲が無かったら確実にボサノヴァは何割か魅力が減じていたと思うのです。
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2009年11月04日

11月8日はcomigo!

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11月8日に日本のブラジル音楽人が大集合!!
詳しくはこちらへ!
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2009年11月01日

ちょり〜んス

Bar Blen blen blen 宿口豪 http://www.blenblenblen.jp

ブーラーズィゥ!ブーラーズィゥ!

毎日目まぐるしく楽しすぎてパソコン見る暇がありましぇ〜ん、ちょり〜んス。

「ちょり〜んス」ってこないだ吉祥寺で外国人に教わったんですけど、すごく流行ったけどもう古いらしいっすね。

最近全くTV見ないので全然知らなかったッス、ちょり〜んス。

すいません。

さて、告知させてください!

久々にソウル・ミュージックをかけ倒すパーティーでDJやりまっす!

橋本徹さん、山下洋さん、CHINTAMさんというマチガイないメンバーです。ヤバいっしょ?

その名も「Soul Souvenirs」。

このイベントのキッカケになったエピソードはコチラ!

もともと音楽にハマるキッカケを僕に与えてくれたのがソウル・ミュージック。
実はヒップホップ以前にソウルだったんですよ。

そして僕にその魅力を教えてくれた十数年来の大先輩方と今回肩を並べてDJさせて頂くワケですが、少々おこがましいかな〜なんて謙遜しつつ、大好きな曲をガンガンかけ倒そうと思っています!

ということで11/6(金)は1:00閉店とさせて頂きますのでよろしくお願いいたします。

今からワクワクしちゃうな〜、皆様のご来場をおまちしてまーす!

以下詳細です!


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Soul Souvenirs

11/6(金) 22:00〜5:00
CASE#00001(03-5456-2522)

DJ :橋本徹(Cafe Apres-Midi)  山下洋(Freedom Suite/Wack Wack Rhythm Band)   CHINTAM(Blow Up Record) 宿口豪(Bar Blen blen blen)

入場無料
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2009年10月10日

黒田恭一さんのこと、良い夫婦の日のパーティ

 bar bossa 林 伸次 http://barbossa.com

 黒田恭一さんが亡くなって4ヶ月になります。
 黒田さんは生前、バール・ボッサによく来店されていたので、その思い出を少し書いてみます。

 黒田さんが初めて私に声をかけてくれた言葉を今でもはっきりと覚えています。10年近く前のことなのですが、私がユニヴァーサルの「トム・ジ・ボッサ」というボサノヴァのCDのライナーを書いたことがありました。黒田さんはそれを読んでくれたみたいで、「あの文章を書いたのはあなたですか? あなたの文章は素晴らしいですね。あなたは文章を書く仕事をもっとやった方がいいですよ」と言っていただけたんです。

 「うわー、こんな大先生にこんな風にほめられるなんて」と私はとても嬉しかったのですが、黒田さんはその後がすごいんです。

 文化村の偉い人とか、出版社の偉い人とかを連れてきて(黒田さんと一緒に飲むくらいの人だからみんなすごく偉い人ばかりなんです)、その出版社とかの偉い人に「ほら名刺を出して出して」と催促して、「この林さんの文章、すごく良いから、ボサノヴァのことで何かあったらこの人に頼んで下さい」なんて言ってくれるんです。

 私はもちろん恐縮しっぱなしだったのですが(まだ20代でした)、なんか黒田さん、すごい人だと思いませんか?

 それでとにかくバール・ボッサのことも気に入ってくれたみたいで、仕事上の付き合いの人だけではなく、奥様や学生時代の友人とかも毎週のように連れて来店していただけるようになりました。

 黒田さんの思い出といえば、こういうこともありました。

 みなさんご存じのように、バール・ボッサのオーディオ装置って全然お金をかけていない、全く素人なものなんですね。で、オープン当初からお客様に「オーディオ、もっと良いのにした方がいいんじゃない?」とずっと言われ続けてきたんです。

 しかし、私はいわゆる「機械モノ」に全く興味がなく、車とかPCとか時計とかそういう男の子っぽいものに対して全く興味が持てないんです。「いやー、オーディオに50万円かけるんなら50万円分のレコードを買いたいなあ」なんて思うタイプなんです。
 
 →あのー、ごめんなさい。そういう「機械モノ」に興味がある人を否定しているわけじゃないんですよ。それはそれで立派な趣味だと思うんです。本当に。でも自分はどうも違う人種なんです。基本的に何かに病的にこだわっている人はすごく好きです。

 さてある日のこと、カウンターに座った二人組のお客様がこう話しているのを耳にしてしまったんです。「いやー、このお店の音、ひどいね」「(この店主は)たぶん良い音っていうのを聞いたことないんだよ」。どうですか? なかなか傷つく言葉ですよね。

 で、もしかしてわかっていないのは私だけで、お客様のほとんどが「ひどい音だなあ、不快だなあ」と思っているのかもしれない、と考え始めたのです。だとしたらお店にとってマイナスです。

 さて、黒田さんはオーディオもとても詳しい方として有名です。ですからこれは黒田さんに相談して、もし可能ならオーディオに関するアドヴァイスを受けたり、そういう業者を紹介してもらおうかなと思ったわけです。

 黒田さんが来店したときにこう言ってみました。「あのー、黒田さん、うちのオーディオの音ってどう思いますか?」「え? 良いんじゃないんですか」と黒田さんが驚いた顔で答えました。そこで私は「いや、お客様に『音が良くないからオーディオを変えろ』ってよく言われるんですよ」と言ってみました。すると黒田さんはちょっと怒ったような表情になって「そんなことをいう人は、このボッサさんのお客じゃないですよ。そんな言葉は無視しておけばいいんじゃないですか」って言ってくれました。

 これも黒田さんらしい言葉だと思いませんか?

 さてさて、ここからはいつもの私の文章のパターンなのですが、ちょっと重苦しくなります。

 私は以前、ヴィニシズモ(※)というフリーペーパーを作っていたことがありました。メンバーは伊藤ゴロー、サンクの保里正人、ヤンググループの土信田有宏、そして今は亡き伊藤愛子(ヲノサトルさんの奥様でボサノヴァ・オンラインの伊藤達之さんの実妹です)という今では考えられないメンバーでした。

 そのフリーペーパーで、「次号はクラシック特集にしよう」と決まりました(もちろんゴローさんのアイディアです)。そして、その企画の目玉は「ヴィニシズモが黒田恭一に会いに行く(Vinicismo visita Kurokyo)」というもので、要するにみんなで黒田さんに会いに行ってクラシックの面白さを教えてもらおうという企画だったわけです。

 私は黒田さんの名刺を持っていたので、黒田さんに手紙を書くことになりました。「実はこういうフリーペーパーをやっておりまして、次回はクラシック特集になりました。そこで是非、黒田さんに登場してもらってクラシックの魅力を語っていただけないでしょうか。そこで実は言いにくいのですが、ちょっと資金不足でして黒田さんにギャラが払えません。出世払いというのでどうでしょうか」という文章をもっと丁寧に書いて、投函しました。

 私は黒田さんからの連絡を今か今かと待っていたのですが、いつまでたっても返事は来ません。さらに、何ヶ月待っても黒田さん本人がバール・ボッサに来なくなったのです。それまでは2週間に一度くらいの割合で来てたんですよ…

 結局、黒田さんは2度とバール・ボッサには来てくれませんでした。私はいつか、黒田さんに何かのかたちでお会いして、あの時の非礼を謝ろうとずっと言葉を考えていました。しかし、その言葉は伝えられないままでした。

 今考えてみると、黒田さんの気持ちがすごくよくわかります。黒田さんはどの組織にも所属しないで、たった一人で文章を書くという仕事で生活をしていたんです。そしてバール・ボッサにはお客として、ちゃんとお金を支払って通ってくれていたわけです。黒田さんが文章を書くのがビジネスであれば、私がお店でお酒を出してお金をもらうのもビジネスです。そこに「仲が良いんだからタダでお願い」という甘えは許されなかったんです。

 これはフリーでやっていく人には「絶対に譲れないところ」なんです。

 中原仁さんという人がいます。中原さん本人もこのブログを読んでくれているので、ちょっと持ち上げているようで本人もそういうことを嫌がるのはわかるのですが、ちょっと書かせて下さい。

 この中原仁さんも黒田さんと同じようなスタンスをとっていて、いつも「ああ自分もマネしなきゃな」と思うことがあります。

 中原さんが企画したイベントがあるとします。そのイベントのフライヤー、私は郵便で送ってもらってもいっこうに構わないのですが、中原さんは必ずお客様として飲みに来て、ちゃんとお金を支払って、そして帰りに「これイベントのフライヤーなんですけど置いてもらえますか?」とおもむろに取り出す訳なんです。

 中原さんは、自分がやっていること(ビジネス)と私がやっているお店(ビジネス)との関係性をあやふやにしないようにしているんです。

 中原さんが何杯か飲んで、最後に、メガネに手をやりながら「そういえば林さん」とフライヤーの束をあの大きい鞄から出すとき、いつも私は黒田さんへの失礼な手紙のことを思い出して後悔してしまいます。

 黒田さんに天国で再会できたとき、うまく謝れればいいのですが…


 ※ヴィニシズモという言葉はもちろん造語で「ヴィニシウス主義=ヴィニシウスみたいに酒と女と文学と音楽を愛するような人生を送ろうぜ」という意味です。ハーバードを出た言語学専門のブラジル人にも「すごくかっこいい響き!」と絶賛された言葉です。いつでも再開する気持ちはありますので、興味のある人は声をかけて下さい。


 さてさて、お店の宣伝です。

 11月22日にバール・ボッサで小さいパーティを開きます。毎年恒例の南仏大岡さんのヌーヴォーと、ちょっとしたおつまみと、山本のりこさんのボサノヴァ・ライブです。

 色んな出会いがあればと思います。あ、男子独身者が少ないのでよろしくです。

 詳しくはこちらへ
posted by ベーマイストレス at 14:39| Comment(0) | ブログ

2009年10月03日

バーデン・パウエル

barquinho ヒガシノリュウイチロウ http://barquinho.biz/

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 このところ「いかにしてボサノヴァ/ブラジル音楽にたどりついたか」というテーマで書いていますが、今回はバーデン・パウエルでいきます。とはいうもののバーデンは日本の、いや世界のブラジル系ギタリストの中では圧倒的人気がある人なので僕なんかが紹介できることはとても限られているのですが。

 例によって個人的な思い出から始めます。以前ジョアン・ジルベルトのことを書いた時、1992年くらいからボサノヴァに本格的にのめりこんだと書きましたが、同時に弾き語りを学べる楽譜が無いかなと楽器屋に行って入手したのがギタリスト江部賢一さん著による『ボサノバ・ギター・ソロ・テクニック』というものでした。この当時は今のようにボサノヴァの弾き語りを主体とした楽譜は全く無くて、この本もバーデン・パウエル系のソロ・ギター譜でした。結局目的が違うこともあって、最後まで1曲もまともにソロ・ギターの曲を弾けることはありませんでしたが、巻頭に載っているそれまで弾いた事が無かったテンションコードのダイアグラムや、ボサノヴァ・バチーダのリズムパターン譜には大変参考になりました。10年前に東京に引っ越して来た頃、友人の紹介で江部賢一さんにお会いしたことがありますが、とても優しい感じの方で、無理やりお願いして「イパネマの娘」を弾いていただいたのを覚えていますが、バーデン・パウエル系の素晴らしい演奏でした。

 さて、楽譜だけではいまいちよくイメージできないので、また楽器屋でうろうろしていると今度はギタリスト佐藤正美さんが制作された『ボサ・ノヴァ・ギター』という教則ビデオが見つかりました。これまた練習曲がバーデン・パウエル系の「イパネマの娘」で、挑戦してみましたがテーマの部分までで挫折。結局弾き語りをマスターするには自分でコピーするしかないのかと、ジョアン・ジルベルトのCDを聴きまくって、耳コピーする日々が始まりました。

 というように当時日本でボサノヴァ・ギターというとバーデン・パウエルから逃れることは出来ない状況で、ジョアン・ジルベルト的弾き語りの教材が揃ってきたのは最近のことだと思います。しかも昨今はYouTube等でジョアンはおろかありとあらゆるブラジルのアーティストの演奏が観られるし、僕が始めた頃から考えると夢のような状況ですね。

 そうそう、これも紹介し忘れてはいけないのですがピエール・バルーが制作した『サラヴァ』という映画でもバーデン・パウエルは重要な役割を担っていました。これはフランス人ピエール・バルーが1969年にブラジルに旅して、様々なミュージシャンに会いにいくというドキュメンタリーですが、ここでピシンギーニャなどの重鎮との橋渡しをしているのがバーデン・パウエルなんですね。もちろん若き日のバーデンの貴重な演奏シーンも満載なので、ブラジル音楽ファンは必見といえる作品です。このビデオもブラジル音楽に出会った頃すり切れるくらい繰り返し観たものでした。

 かようにここ日本でブラジル音楽を聴いたり、ギターを弾いたりする上でバーデン・パウエルに全く触れずにいることは難しいともいえるのですが、個人的には彼の作品にスポットを当てると「あれ?」と思うことが少なくないです。もちろん全ての作品を聴いているわけではないのでなんとも言えないけれど、彼はギターを弾く事が目的で、あんまり録音に興味無かったのではと思ってしまいます。ものすごい鬼気迫る演奏のあとに、気の抜けるような本人のヴォーカルが入ってきたり、ナチュラルで聴きたいギターにすっごいきついディレイをかけてみたりと、ちょっと自己プロデュース的センスが無いのかなと…。あと、バーデンの作風はいわゆるカフェ的な響きとは最も遠いところにある作風で、とてもプリミティヴな雰囲気を持っていますね。実際バルキーニョでかけることはまれだったりしますが、個人的にはやはり天才だと思いますし、ワン・アンド・オンリーの存在だと思います。

 最後にバーデンのおすすめ作品をひとつあげるとするならば、やはりエレンコからリリースされた『ア・ヴォンターヂ』でしょう。1曲目に世界のギタリストに衝撃を与えた「イパネマの娘」が入っていますし、「ビリンバウ」「宇宙飛行士」「コンソラサォン」「サンバ・トリスチ」などの彼の作曲による代表曲も多く収録されているので、バーデンのというよりもボサノヴァの名盤の1枚だと思います。



 さて、本日からいよいよ『ブラジル映画祭2009』が始まりますね。映画を観に渋谷に来られた際にはぜひB+2各店へ。映画祭にちなんだオリジナルカクテルを用意してお待ちしております!あと、リオ・デ・ジャネイロ、オリンピック開催地決定おめでとう!
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2009年09月25日

秋、大好き〜!

Bar Blen blen blen  宿口 豪 http://www.blenblenblen.jp

秋ですな。
大好きな秋ですよ、一番好きかもしれない。

食欲の秋ですよ。
でもサンマは8月の方が美味いけどな。

スポーツの秋ですよ。
何もしてないや、チャリンコに乗ってるくらいか?

読書の秋ですよ。
今月はまだ税金の本しか読んでないよ、必要に迫られてな(誰か俺に金をくれ)。


ということで、芸術の秋なんです、ハイ。

さあ、ブラジルからの新しい音楽、秋になっていっぱいリリースされてますよ〜。
ラティーナで買いまくりよ。

例えば、コレだ!
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Mart’nalia(マルチナリア)の『Minha Cara』。

90年代にリリースされていた音源の復刻盤だって。
ジャケはまるで香取慎吾だが、中身は極上のメロウ・サンバ集だよ。

とは言ってもNRTからリリースされてる名作『Menino do Rio』のような清々しい洗いざらしのサンバじゃなくて、アーバンな感じよ。

リオ的アーバン感ね、夜の感じ?

例えば、クラブで遊び疲れた深夜3時、ホテルのあるコパカバーナ海岸に向かうタクシーがアトランチカ大通りに入った時に、カー・ラジオからこんな曲がかかったら・・・死んじゃうね、サイコーすぎて。
ああ、死んでしまうとも。

レーベルはビスコイト・フィノ。間違いないでしょ。


そして大本命、Ana Carolinaの『Nove』!
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プロデュースはなんとカシン、マリオ・カルダート、アレ・シケイラ。
コレはヤバい!

ゴタン・プロジェクトを彷彿させるタンゴ・ミーツ・エレクトロニカな楽曲あり、ヴォコーダーや太いホーン・セクションが鳴り響く、カシンのプロデュースが冴え渡るサンバあり、去年リリースされたアルバムがブラジル音楽ファンの間でも話題を呼んだ、エスペランサ・スポルディングが華を添える美しいスロウ・ナンバーありの大充実作よ。

極めつけはジョン・レジェンド(!)とのデュエット!!

スゲーいい曲

死ぬ!ああ、死んでしまう、イイ曲過ぎて〜♪

どういう経緯でこの奇跡のデュオが実現したんだろう、誰か教えてください。

アナ・カロリーナの曲って日本の秋にぴったりなんだよな〜、不思議よね〜。

これからブラジルは夏に向かっていくので、新譜のリリースも加速していきますから、年末前後までは要チェックですね。


さあ、芸術は音楽だけじゃないよ。

映画もヤバイ!

ブラジル映画祭、今年もはーじーまーるーよーー!

東京は10/3〜9、場所は渋谷シアターTSUTAYA、大阪は10/10〜16、場所はシネ・ヌーヴォ。

何といっても目玉は『ミステリー・オブ・サンバ 〜 o misterio do samba』ですよ。
ミステリーと言っても殺人事件とかじゃないよ。

マリーザ・モンチのプロデュースによる、老舗サンバ・チームの長老達にスポットを当てたドキュメンタリー・フィルムなのです。

ざっくり言っちゃうとブラジル版『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』か?

コレはヤバイでしょう!

上映に先立ち、Blenでは中原仁さんによる予習会も開催しますよ〜。
参加すれば映画を何倍も楽しめるはず!


今回は『カルトーラ』も再上映するから、もう全音楽ファン必見だね!

そして!

『ヴィニシウス』に続き、この度「ブラジル映画祭2009」とも「渋谷B+2」はコラボレーションしますぜ。

各店でオリジナル・カクテル「シネマ・ノーヴォ」を用意して皆様をお待ちしておりますよ。

詳細はコチラを見てくんなまし。


そういえば『ヴィニシウス』の時は、個人的にちょっとバタバタしていて映画館には足を運べなかったのですが、8月に大先輩、山名昇さんから電話がかかってきて「ゴウ、今吉祥寺の映画館で『ヴィニシウス』演ってるから観に行こうぜ」という素晴らしいお誘いを頂き(粋な人は誘うタイミング、誘い方までホント粋なのだ)、ようやくスクリーンで堪能できました。

そして、音楽をデカイ音で聴かなきゃいけないように、やっぱり映画はデカイ画面で観ないといかんな〜と思ったのでした。

作り手は大きなスクリーンで鑑賞されることを前提に映像を撮ってるワケだから、然るべき環境じゃないとその作品を観たことにはならないよな〜、なんて。

だから今回は何とか時間作って渋谷シアターTSUTAYAに足を運びます!


さあ、短い秋を大いに堪能いたしましょうね!
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2009年09月09日

やってみたいお店

http://barbossa.com/index.html bar bossa 林 伸次

 もし「売り上げとか全然気にしなくていいから好きな店やってみて」と言われたら、私は正直、バーはやりません。

 もちろん、バー経営とかバーテンダーの仕事ってすごく面白いんですよ。でも、色々と大変なことがあるんですよ、この仕事。

 で、はじめの話題に戻ると、私は「だったらこんなお店をやりたい」です。

 店の大きさはバール・ボッサを少しだけ小さくしたくらい。店の3分の1が飲食部門で、テーブルが二つとカウンターのみ。メニューは3つだけで、カレーライス(これがメチャクチャおいしい)と、ホット・コーヒーとアイス・コーヒーだけ。紅茶もお酒もありません。

 で、店の3分の1はレコードとCDの販売。新譜も扱うけど、基本的にはブラジルとアメリカの買い付けの中古レコードと中古CD。

 レコードとCDの内容は、昔、15年くらい前、東北沢にあったラストチャンス・レコードが一番近いでしょうか。ブラジルとサントラと静かなジャズ(ヴォーカルもの、ピアノもの、ストリングスもの)と室内楽のクラシックのみのお店でした。ロックなし、ソウルなし、レゲエなし、ブルースなし、バップなし、交響曲なし、です(あの、ロックとソウルが嫌いなわけじゃないですからね。今でもT-REXとかテレヴィジョンが街でかかっているとしびれています)。

 ちなみにこのラストチャンス・レコードで店員じゃないのに自由にカウンターの中に入って高価なブラジル盤をかけてるお兄さんがいて、「あの人羨ましいなあ」と思っていたら、その人が伊藤ゴローさんでした。

 「あれれ、林、今頃レコード?」と思ったあなた。友人のダウンタウン・レコードの土田君もよく言っているのですが、今、結構レコードって売れるんですよ。今続々と各社がレコードを発売しているんですけど、どれもがCDなんかより全然売れているんですよ。

 今、CDしか出ていなかったタイトル、例えばジョアンの「声とギター」的なアルバムをレコードで発売すると結構いけると思いますよ。

 さて、残りの3分の1はもちろん古本コーナーです。本当は新品の本でもいいのですが、出来ればその本を持ってテーブルでコーヒーを飲みながら読んでほしいのです。そう、本は売っているのですが、マンガ喫茶のように自由に読んで良いわけです。

 というわけで、この本は私の好みを反映しつつ、コーヒーを飲みながら読めるような本をセレクトするわけです。

 だから小説は長編ものではなく、短編集を中心に置いています。レイモンド・カーヴァーや芥川龍之介、内田百閨A星新一は短いのばかりだから確定ですね。トルーマン・カポーティ、ガルシア・マルケス、ヘミングウェイ、村上春樹、安部公房も長いのじゃなくて短編集です。夏目漱石はそういう理由で夢十夜とかだけですね。

 短編のみとなると、そうかポール・オースターとトバイアス・ウルフが置けないのが残念です。

 あと、忘れてはいけないカズオ・イシグロ。この人の最新作の短編集「夜想曲集」読みましたか? ただの海外文学好きだけに独り占めさせたくない、「本当の音楽好き」にオススメしたい名作ですね。

 あとエッセイ集もかなりの部分をしめますね。エッセイってお店でコーヒーを飲みながら読むのにぴったりですから…

 エッセイは翻訳家のものが何故か面白いって知っていましたか? 青山南、柴田元幸、岸本 佐知子、この3人は新刊が出ると確実に買う人たちです。中でも青山南の文章は本当に好きで、(誰も気付かないけど)しょっちゅう真似しています。

 最近は時の人って感じの穂村弘のエッセイ集も全部揃えたいですね。この人は「ウジウジねた」が有名ですが、時々すごく本気に「言葉について」書くときが最高なんです。

 詩人のエッセイも良いですよね。長田弘のねこに未来はないは必ず置きたい本ですね。

 そうそう、作品社から出ている日本の名随筆ってご存じですか? これ、名シリーズですよね。実は私の実家にこれが全巻あるので、実家から持ってきてお店に置きたいです。

 あと、そういう場所で自分が読みたい本を考えみたら、結構シリアスなノンフィクションものが読みたいですね。これも短いのを選びたいですが、長くてもOKにします。

 猪瀬直樹ってみなさん意外と未チェックだと思うのですが、すごくロマンティックな人で優れた作品が多いんですよ。ミカドものも面白いのですが、空気と戦争あたりはどうでしょうか。面白いですよ。

 保阪正康も置きたいですね。検証・昭和史の焦点という本があるんですけど、これのトラウトマン工作が面白くって最高! 下手な小説よりよっぽど心が震えます。「歴史にIfはないけれど…」というあれです(すいません、2次大戦史とにかく好きなんです)。

 あと、前世への冒険も必ず置きたい本ですね。これ、おそらく誰もチェックしていない本だと思うのですが、面白いんですよ。

 こういうお店では定番ですが、沢木耕太郎も置くべきですよね。この人の本に出会って人生が狂う若者をもっと増やしたいです。ちなみにこの人、5年くらい前に今は亡き渋谷のブック・ファーストで見かけたんですが、ムチャクチャかっこよかったです。

 さて、マンガは置くべきか? うーん、難しい問題ですね。ここはあえてやめておきます。あ、フジモトマサルだけ置こうかな。

 どうですか? 個人的にはこんなお店があったら本気で通うんですが…

 あ、お店の宣伝です。またボッサ・レコード更新しています。前回、すごく好評で問い合わせも多かったので、頑張って更新続けます。よろしくお願いします。

 ええと、さらにお店の宣伝です。bar bossaはシルヴァー・ウイークでしたっけ。その間も全部営業いたします。日曜日もやりますよ。是非、ご来店下さい。
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2009年09月03日

アストラッド・ジルベルトの謎

barquinho ヒガシノリュウイチロウ http://barquinho.biz/

AstrudGilberto.jpg

 今回は少しアストラッド・ジルベルトのことを…。アストラッドって、多くの人がボサノヴァを意識し、聴き始める入り口にいるアーティストなのではないでしょうか。実際僕も若い時にアルバイトしていた喫茶店にあったレコードで初めて聴いて興味を持ち、ベスト盤を買って聴きこんだくちです。でも、人は何故ボサノヴァやブラジル音楽にのめりこんでいくと、アストラッドを聴かなくなっていくのでしょう。アメリカで活躍したから?ブラジルで人気が無いから?英語で歌うから?作品を重ねるごとにブラジルっぽくなくなったから?いまいち本人にアーティスティックなポリシーを感じられないから? まあ、どれも僕が勝手に想像で書いているわけですけど、当たらずといえども遠からずというところではないかな。熱心なブラジル音楽ファンのあいだでは「アストラッド好き」って言うのさえ憚られる空気さえ感じられたりします。

 そんなアストラッドへのいわれのない偏見を覆すべく思い切って書いてしまいますが、僕はアストラッド・ジルベルトのファースト・アルバム『The Astrud Gilberto Album』をボサノヴァの最高傑作のひとつと考えています。とは言うものの僕が単にひとりで叫んでいるだけで、全く何の権威も無いわけだし、ボサノヴァの秀逸なアルバムは他にも沢山あるのはわかりますが、とりあえずボサノヴァファンにもう一度アストラッド・ジルベルトを聴いてもらうためにもそう言い切ってしまいましょう。

 『The Astrud Gilberto Album』は日本盤で『おいしい水』というタイトルで出ていて現在まで何度も再発されているので入手は困難ではないと思います。さて、何故このアルバムをボサノヴァの最高傑作と考えるかというと、まず第一に選曲のわかりやすさです。このアルバムはドリヴァル・カイミの「アンド・ローゼズ・アンド・ローゼズ」の1曲を除き全てアントニオ・カルロス・ジョビンの作品で、スタンダード・ナンバーを多く含み、さらにジョビン自信もギターとヴォーカルで参加しています。演奏面ではさらにピアノにジョアン・ドナートが参加しているのも聴き所ですし、マーティ・ペイチのオーケストラ・アレンジも過不足無く心地良い。そしてなんと言っても素晴らしいのはアストラッドの歌声。『ゲッツ/ジルベルト』の「イパネマの娘」と「コルコヴァード」の延長線上にある初々しい歌声を全編で聴かせてくれます。このアルバムの企画は当然、シングル盤「イパネマの娘」の大ヒットを受けてのものなので、プロデューサーであるクリード・テイラーの気合いも相当なものだったのではないでしょうか。おすすめの1曲はアルバム最後の「All That's Left Is to Say Goodbye」。この曲はポルトガル語の「É Preciso Dizer Adeus」の方が有名かもしれませんが、アストラッドのヴァージョンは他のものよりリズムが軽やかで全く別の曲のよう。聴き比べてみるのも面白いと思いますよ。

 こういう仮定をするのは不毛とは思いますがあえて言うと、もしアストラッド・ジルベルトがいなかったら、こんなにも世界にボサノヴァは浸透しなかったと思うのです。アントニオ・カルロス・ジョビンの良さ、ジョアン・ジルベルトの良さは音楽的にマニアックな嗜好の人にうける性質のもので、『ゲッツ/ジルベルト』にしてもアストラッドのヴォーカルが入っていなければ、大ヒットは難しかったでしょう。そう、あの「イパネマの娘」はアストラッドの歌声があったから世界的に大ヒットしたと思うのです。以前あるボサノヴァのTVドキュメンタリー番組で名ベーシスト、セバスチァン・ネットが、『ゲッツ/ジルベルト』録音時のアストラッドのヴォーカルを「ひどかった、最悪だった」としきりにこきおろしていましたが、何故そこまで言うのか不思議でなりませんでした。だって、アストラッドのヴォーカルが魅力的だったからこそ、プロデューサーのクリード・テイラーはシングル盤「イパネマの娘」をアストラッドのヴォーカルのみを残して(ジョアン・ジルベルトを削除して)リリースし、それがマニア以外の一般の音楽ファンに受け入れられたのですから。

 アストラッドのヴォーカルの最大の魅力は「拙さと大人っぽさの絶妙なブレンド」でしょうか。歌を巧く聴かせる要素である声量、抑揚、ビブラートはどれも無いに等しいのに声質が大人っぽくクールなので、クロディーヌ・ロンジェやジェーン・バーキンのようなささやき系ロリータ・テイストになっていないところや、高音部の不安定さが儚い感じを醸し出しているところなどは、偶然とも思えるけどそれも一種の実力。そしてこれは特筆すべきところだけど、ちゃんとブラジルのリズム感を持っているところもポイントが高いですね。

 近年になってボサノヴァ初期の音源がネット上に流れ出し、今まで絶対に聴くことができないと思っていた貴重な演奏が続々と聴けるようになったのですが、1960年5月に行われた建築大学でのボサノヴァ・コンサートの記録もそのひとつ。なんとこのコンサートのトリにジョアン・ジルベルトがアストラッド・ジルベルトといっしょに出演しているのです。注目すべきは当時のアストラッドの歌声。これが、「イパネマの娘」やそれ以降の歌声と全く違う堂々としたものなのですね。当時のシルヴィア・テリスの唱法をまねている感じでしょうか。つまりまだサンバ・カンサォンの香りが残る歌声なのです。この演奏から「イパネマの娘」まで4年の歳月があるのですが、どういう経緯でアストラッドのヴォーカルが変化を遂げたのかが謎です。だって、1960年の時点では、上手いとは思うけどありがちな歌声なのです。もしジョアンが「イパネマの娘」で聴かれるような唱法に導いたとするならば、なぜこの時点で同じ歌い方をしていないのでしょう。きっと、人前で歌うまでにジョアンとかなりの量のリハーサルをしていたはずだし、ジョアンの歌声もいやというほど聴いていたはずなので、ジョアンの指導ではないような気がするのです。それではジョビン? クリード・テイラー? それともアストラッド自信が自分で編みだした唱法なのでしょうか? この疑問に対する答えが書かれた文献や話を聞いた事が無いので、どなたか答えを知っていたらお教えください。お店でワイワイこれについて議論するのも楽しいかもしれませんね。
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2009年08月25日

Shit,Damn,Motherfucker! それでもスーパー・ポジティブ・シンキング 2009

Bar Blen blen blen 宿口 豪 http://www.blenblenblen.jp

厄年じゃないんですけどね。

嫌なことが多過ぎなんですよ、何なのだろう一体。

2月には原チャリで事故りました。完全に自爆でしたが、数日間松葉杖。

5月には水難の相がでました。

シュハスコをやれば大雨で凍えるほど寒い中、危うく川の中洲に取り残されそうになる始末。

まあそれでも100人くらい来てくれましたけどね。


その数日後、店が何故か水浸しに。

ビルの上のテナントさんの工事で不具合が生じて、ポタポタと水漏れしてたんですね。

レコードが水没してたらハッキリ言って数千万円請求しますけど、何も害がなかったのでよかった!と思っていたら、キッチンの高いところにある引き出しにどうやら水が溜まっていたみたいで。

その中のものを取ろうとしたら、
ドリフばりに頭からザバッーといっちゃいました、営業中に。

幸いTシャツの予備があったからすぐに着替えたんですけど。

水も滴るいいバーだねっ!とはバイトのチカちゃんの弁。

まあ、そういうことにしときましたけどね。


夏が始まってからはまあ、コレがひどくてですねぇ。
モノをなくすんですよ。

ある日、店に着いて鍵を取り出そうとしたらポケットにあるはずのそれがないんですよ。

ひょっとして地元の駅に置いてきた原チャリに挿しっぱなしか!ということで、帰宅ラッシュの中、家に向かって逆戻り。

手には冷凍の海老やら野菜やらデカイ荷物がドッサリ、ようやく着いた駅の原チャリに鍵は無事にあったからまだ良かったんだな、この時は。


こないだ実家の群馬県太田市に帰省して、友人が営む居酒屋で同窓会がありました。

懐かしい面々との再会に、順調に酒もすすみます。
そして場所を変えて2次会ということで、自転車に乗りフラフラと目と鼻の先にある居酒屋に到着した瞬間、冷や汗が。

財布がない。

しかも今日に限って数日分の売上がアノ中に。。。
免許証、定期、保険証、カード類、全てアノ中に。。。

金を支払って店を出てからわずか5分の出来事でした。
すぐに来た道を戻り、何往復をするも、影も形も見当たらない。

ご存知の方もいるかと思われますが、太田駅前というのは北関東最大規模の夜の歓楽街なワケですよ。
深夜0時でも割と人通りは多いんだな。

怪しい店がズラッと並んでいるんですね。呼び込みがそこらじゅうで声を掛けているんですよ。

そりゃあ金を拾えば遊び場には困りませんよね。

電話で遺失物届けをした後カード類をすぐに止めて、さっさと家に帰りました。

数日後太田警察より連絡があり、財布が見つかったとのコト。

駅前のドンキホーテの敷地内にて翌日拾われたみたいです。
モチロン現金は全て抜かれていましたが、幸い他のものは全て入っていました。

「全部自分が悪いからしょうがないですね〜」なんて、後日店で中原仁さんに報告していたら、「きっと金に困ったブラジル人が拾って、その金で今頃なんとか今月も生活できたとか言いながら感謝されているんじゃないかな」なんておっしゃられて。なるほど!そうだ!なんて。


まあ、そういうことにしときましたけどね。


そして、またやっちまったよ、ポーハ。

8/23(日)のこと。
この日は逗子海岸にてオモシロ・イベントが同時多発!

まず橋本徹さんのブランニューCD『Mellow Beats Friend&Lovers』のリリースパーティー@音魂。

DJは橋本さん、中村智昭くん、Soil&”Pimp”Sessionの社長、nujabes、DJ Mitsu the Beats、そしてライブがCalmとJ.A.Mという超豪華イベントだったんですよ。

みんな素晴らしいのは当ったり前なのだが、個人的に圧倒的だったのがJ.A.M

以前中村智昭くんが六本木のAlfieで彼らとパーティーを主催していた時に、中村君から「ホントやばいんだよ!」と常々聞かされていたんだけど、ホント凄かった。

ていうか、音楽ってやっぱり素晴らしいな!と心の底から感じ、しばらく言葉にならなかった。

1st収録曲からロイ・エアーズのカバー含め数曲、新曲の「産業革命」(笑)、最後は超高速の「Night in Tunisia」。
圧巻でした。
何より3人の表情がイイ!コレだよ、コレ。
海岸でピアノ・トリオでお客さん盛り上がりまくり、凄くない?

と抽象的にしか未だに表現できないので、コチラをご覧下さい。

橋本さんもとてもいい表情をしてました。R.kellyの「Summer Bunnies」かかったところで僕のテンションも最高潮!
このパーティー、お客さんが皆いい表情してました、グッド・ヴァイブス!!

そして場所をちょっと移動して。

そう、もはやオナジミ、ブラジルの海の家ピレキーニョでぇ〜す。
この日はディモンシュの堀内さん主催のテルサだったのです。

こちらも皆楽しそう。
メンバーもいつものDJ陣にプラスしてゲストは中原仁さんとWillie Whopperさん、そして箱バンのZamba Bemのライブに映画の上映という豪華な内容。

さあ、この辺りから雲行きが怪しくなりますよ〜。

もう楽しすぎてテキーラをボトル買いです。
いい音楽に酒!!最高の組み合わせです。
シャブはダメ、絶対!
(余談ですが、年に一回いつも井の頭線の改札辺りで「ドラッグ撲滅アコースティック・ライブ祭り」とかやってるんですけど、ホントつまらないんですよ。
「シャブ打つぐらいならテキーラ飲もうぜ!アコースティック・ライブ祭り」とかにすればいいのにな〜とか思います。)

テキーラを皆でイェ〜イなんて飲んでいたのですが。。。
さあ、その先の記憶がございません。

僕滅多に記憶なくさないんですけど、前日楽しみすぎて全然寝れなかったんですよ(って34歳のセリフじゃないですね。。。)。

睡眠不足からか、浜辺に倒れて爆睡していたそうです。
(ちなみに2年前にはウチのバイトのチカちゃんが同じ場所に倒れました。そしてバイトのゆうこちゃんは今年のシュハスコで多摩川で倒れました。やっぱり僕は見る目があるのかも。)

最後はモシダーヂ・ヴァガブンダの皆様が僕を担いで持ち帰ってくれたとのコト。
やっちまいました。。。

生まれてすいません。

そして、携帯を失くしてしまったのでした。

恐らく砂浜に埋もれていることでしょう。
完全に自業自得ですね。

でも携帯なんかなくしちゃっても別にいいんですよ。

ただ素晴らしい音楽を聴かせてくれる仲間や先輩方、一緒に笑い合える友達、酔った僕に蹴られたり水掛けられながらも背負ってくれるような友達だけは絶対に失いたくないな〜、なんて。

まあ、そういうことにしときましたけどね。
posted by ベーマイストレス at 17:18| Comment(0) | ブログ