2009年08月25日

Shit,Damn,Motherfucker! それでもスーパー・ポジティブ・シンキング 2009

Bar Blen blen blen 宿口 豪 http://www.blenblenblen.jp

厄年じゃないんですけどね。

嫌なことが多過ぎなんですよ、何なのだろう一体。

2月には原チャリで事故りました。完全に自爆でしたが、数日間松葉杖。

5月には水難の相がでました。

シュハスコをやれば大雨で凍えるほど寒い中、危うく川の中洲に取り残されそうになる始末。

まあそれでも100人くらい来てくれましたけどね。


その数日後、店が何故か水浸しに。

ビルの上のテナントさんの工事で不具合が生じて、ポタポタと水漏れしてたんですね。

レコードが水没してたらハッキリ言って数千万円請求しますけど、何も害がなかったのでよかった!と思っていたら、キッチンの高いところにある引き出しにどうやら水が溜まっていたみたいで。

その中のものを取ろうとしたら、
ドリフばりに頭からザバッーといっちゃいました、営業中に。

幸いTシャツの予備があったからすぐに着替えたんですけど。

水も滴るいいバーだねっ!とはバイトのチカちゃんの弁。

まあ、そういうことにしときましたけどね。


夏が始まってからはまあ、コレがひどくてですねぇ。
モノをなくすんですよ。

ある日、店に着いて鍵を取り出そうとしたらポケットにあるはずのそれがないんですよ。

ひょっとして地元の駅に置いてきた原チャリに挿しっぱなしか!ということで、帰宅ラッシュの中、家に向かって逆戻り。

手には冷凍の海老やら野菜やらデカイ荷物がドッサリ、ようやく着いた駅の原チャリに鍵は無事にあったからまだ良かったんだな、この時は。


こないだ実家の群馬県太田市に帰省して、友人が営む居酒屋で同窓会がありました。

懐かしい面々との再会に、順調に酒もすすみます。
そして場所を変えて2次会ということで、自転車に乗りフラフラと目と鼻の先にある居酒屋に到着した瞬間、冷や汗が。

財布がない。

しかも今日に限って数日分の売上がアノ中に。。。
免許証、定期、保険証、カード類、全てアノ中に。。。

金を支払って店を出てからわずか5分の出来事でした。
すぐに来た道を戻り、何往復をするも、影も形も見当たらない。

ご存知の方もいるかと思われますが、太田駅前というのは北関東最大規模の夜の歓楽街なワケですよ。
深夜0時でも割と人通りは多いんだな。

怪しい店がズラッと並んでいるんですね。呼び込みがそこらじゅうで声を掛けているんですよ。

そりゃあ金を拾えば遊び場には困りませんよね。

電話で遺失物届けをした後カード類をすぐに止めて、さっさと家に帰りました。

数日後太田警察より連絡があり、財布が見つかったとのコト。

駅前のドンキホーテの敷地内にて翌日拾われたみたいです。
モチロン現金は全て抜かれていましたが、幸い他のものは全て入っていました。

「全部自分が悪いからしょうがないですね〜」なんて、後日店で中原仁さんに報告していたら、「きっと金に困ったブラジル人が拾って、その金で今頃なんとか今月も生活できたとか言いながら感謝されているんじゃないかな」なんておっしゃられて。なるほど!そうだ!なんて。


まあ、そういうことにしときましたけどね。


そして、またやっちまったよ、ポーハ。

8/23(日)のこと。
この日は逗子海岸にてオモシロ・イベントが同時多発!

まず橋本徹さんのブランニューCD『Mellow Beats Friend&Lovers』のリリースパーティー@音魂。

DJは橋本さん、中村智昭くん、Soil&”Pimp”Sessionの社長、nujabes、DJ Mitsu the Beats、そしてライブがCalmとJ.A.Mという超豪華イベントだったんですよ。

みんな素晴らしいのは当ったり前なのだが、個人的に圧倒的だったのがJ.A.M

以前中村智昭くんが六本木のAlfieで彼らとパーティーを主催していた時に、中村君から「ホントやばいんだよ!」と常々聞かされていたんだけど、ホント凄かった。

ていうか、音楽ってやっぱり素晴らしいな!と心の底から感じ、しばらく言葉にならなかった。

1st収録曲からロイ・エアーズのカバー含め数曲、新曲の「産業革命」(笑)、最後は超高速の「Night in Tunisia」。
圧巻でした。
何より3人の表情がイイ!コレだよ、コレ。
海岸でピアノ・トリオでお客さん盛り上がりまくり、凄くない?

と抽象的にしか未だに表現できないので、コチラをご覧下さい。

橋本さんもとてもいい表情をしてました。R.kellyの「Summer Bunnies」かかったところで僕のテンションも最高潮!
このパーティー、お客さんが皆いい表情してました、グッド・ヴァイブス!!

そして場所をちょっと移動して。

そう、もはやオナジミ、ブラジルの海の家ピレキーニョでぇ〜す。
この日はディモンシュの堀内さん主催のテルサだったのです。

こちらも皆楽しそう。
メンバーもいつものDJ陣にプラスしてゲストは中原仁さんとWillie Whopperさん、そして箱バンのZamba Bemのライブに映画の上映という豪華な内容。

さあ、この辺りから雲行きが怪しくなりますよ〜。

もう楽しすぎてテキーラをボトル買いです。
いい音楽に酒!!最高の組み合わせです。
シャブはダメ、絶対!
(余談ですが、年に一回いつも井の頭線の改札辺りで「ドラッグ撲滅アコースティック・ライブ祭り」とかやってるんですけど、ホントつまらないんですよ。
「シャブ打つぐらいならテキーラ飲もうぜ!アコースティック・ライブ祭り」とかにすればいいのにな〜とか思います。)

テキーラを皆でイェ〜イなんて飲んでいたのですが。。。
さあ、その先の記憶がございません。

僕滅多に記憶なくさないんですけど、前日楽しみすぎて全然寝れなかったんですよ(って34歳のセリフじゃないですね。。。)。

睡眠不足からか、浜辺に倒れて爆睡していたそうです。
(ちなみに2年前にはウチのバイトのチカちゃんが同じ場所に倒れました。そしてバイトのゆうこちゃんは今年のシュハスコで多摩川で倒れました。やっぱり僕は見る目があるのかも。)

最後はモシダーヂ・ヴァガブンダの皆様が僕を担いで持ち帰ってくれたとのコト。
やっちまいました。。。

生まれてすいません。

そして、携帯を失くしてしまったのでした。

恐らく砂浜に埋もれていることでしょう。
完全に自業自得ですね。

でも携帯なんかなくしちゃっても別にいいんですよ。

ただ素晴らしい音楽を聴かせてくれる仲間や先輩方、一緒に笑い合える友達、酔った僕に蹴られたり水掛けられながらも背負ってくれるような友達だけは絶対に失いたくないな〜、なんて。

まあ、そういうことにしときましたけどね。
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2009年08月21日

Blenにてポルトガル語教室始まります!

Blenのゴウです。

毎週土曜日ブレンの開店前に行われていた、荒井めぐみさんによるポル語教室が双方の都合により終了して早数ヶ月。
ちょっと淋しい土曜日にも慣れかけた今日この頃ですが、ここで朗報!

ブレンの看板バイト、ゆうこちゃんがお客さんからの多数の要望(!)にお答えして、とうとうポルトガル語教室を始めることになりました〜!パチパチパチ〜!

ゆうこちゃんは語学の最高学府・東京外語大ポルトガル語科卒にして、ブラジル滞在歴2年という輝かしい経歴の持ち主。
自身が率いるパーカッション集団BAQUEBAでは毎月ワークショップを開催しており、初心者に物事をイチから教えることは彼女の最も得意とするところなのです。


語学ずっと習ってるのに何で私は喋れないんだろう?って人、いませんか?

ABCからはじめる超初心者クラスながら、彼女が追求するのは実践力。
スグに使える日常会話フレーズを覚えて、酒場で会ったブラジル人とも会話ができるようになりたいと思いませんか?

90分間みっちり集中レッスンが月2回。

興味のある方、まずは体験レッスンから!

以下詳細です!

E AÍ!? BRASIL!!
ポルトガル語入門クラス!!


9月19日(土)スタート!!(初回は体験レッスン!1500円。予約不要です。)

毎月第1・3土曜日
18:00〜19:30

場所 渋谷Bar Blen blen blen 
   渋谷区道玄坂1-17-12 野々ビル2F
   03-3461-6533

料金 月謝6000円 (+1ドリンクオーダー)
   入会金・教材費等はかかりません。

ABCから学ぶ超入門クラスです。
ポルトガル語のしくみや発音などから丁寧に教えていきます。
みんなでわいわいしゃべりながら、すぐに使える日常会話フレーズを楽しく覚えていきましょう。


古尾谷悠子
東京外国語大学ポルトガル語専攻卒業。
在学中に1年間ブラジル・バイーア連邦大学に留学。
卒業後、2度にわたり北東部ペルナンブーコ州を中心に長期滞在。
現在はパーカショニストとして都内で音楽活動中。
CD歌詞対訳ほか、翻訳経験多数。

お申し込み・お問い合わせ
yuco@tamancobuco.com
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2009年08月09日

最近の気になる音楽とか

bar bossa 林 伸次 http://barbossa.com/index.html

 バンドネオン奏者の北村聡
さんに「カルロス・アギーレって知ってますか? 林さん、たぶん好きだと思いますよ」と言われました。

 カルロス・アギーレ…、最近どこかで目にしたような名前だなと思ったのですが、思い出せず、こう答えました。「北村さんのオススメでしたら今度タワーかユニオンに行ったときにでも買ってみますよ」

 すると北村さんが「いやこのアーティスト、自分のインディーズ・レーベルで出しているんで日本ではちょっと入手が難しいんですよ。たまに少しだけ入荷することもあるんですけど、それもすぐ売り切れちゃうんです。今度コピーして持ってきますよ」ということでした。

 で、先日、北村さんからそのカルロス・アギーレのCDRを2枚頂いたのですが(もちろん後でちゃんと正規盤買いますからね)、これがもうすごいことになっているんです。

 で、とにかくどんな人なんだろうと思ってうちに帰って検索してみたら、ひっかかったのが山ブラのディスクガイド大洋レコードでした。なるほど、山ブラで見たのをなんとなく覚えていたんですね。

 北村さんの情報によると(北村さんはアルゼンチンでライブも見ています)、この人は現在の南米の重要音楽家10人にも選ばれている人(音を聴けば当然という気がします)で、ピアニスト、作曲家で、アルゼンチンのコンテンポラリー・フォルクローレ・シーンを代表する人なんだそうです(フォルクローレと言っても『コンドルは飛んでいく』の世界ではなくて、ネオアコあたりが語感的には近いようです)。アルゼンチンの地方の音楽を調べたりする人だそうなので、ちょっとアカデミックよりな人なんでしょうか。

 で、北村さんも山ブラさんも大洋レコードさんも指摘するように、この人の音楽、なんだか「ミナスっぽい」んです。「Violeta」というアルバムなんかすごく「Infinite Love」に印象が似ているんです(インフィニトが空を飛んでいる感じだとしたら、ヴィオレタは海底を漂っている感じという違いはありますが)。「やっぱりこの人、ミナスの音楽とか聴いているんですかね?」と北村さんに聞くと、「たぶん聞いていると思いますよ。アルゼンチン人ってブラジル音楽好きだから」と言ってました。

 このカルロス・アギーレがどこまで意識的にブラジル音楽を取り入れているのかちょっと知りたいところですが、それはまた別の話ですね。

 しかし、こう書いていてつらいのはホント、入手困難だという事実です。今のところ、大洋レコードとラティーナ
くらいしか扱っていないようです。

 そこで、お願いなのですが、誰か勇気ある人、このカルロス・アギーレのレーベルとライセンス契約して日本で正規国内盤として売り出していただけないでしょうか。こういう音楽はやっぱり日本語の解説と対訳がついたもので持ちたいと思うんです。

 蛇足なのですが、HPを見ていただければわかるかと思うのですが、カルロス・アギーレさんが持つ世界観ってとても素敵なんです。私は雲をクリックしたときに雨が降ってきたのには、正直やられてしまいました。ちょっとブラジルにも日本にもない感覚ですよね。

 こんな素晴らしい音楽が日本で入手困難なんてちょっともったいないと思いませんか?

                    ●

 中村心之さん(ハダメス・ニャターリのCDを企画制作した方です)から「林さん、ブラジルのクラシックってすごく面白いんですよ。例えばこんなアルバム知ってます?」と興味深いアルバムを紹介されました。 

 このアルバムはジルソン・ペランツェッタ名義で、クラウヂオ・サントロというクラシック作曲家の「前奏曲集と愛の歌曲集」という作品を演奏したものです。で、前奏曲は基本的にジルソンのソロ・ピアノ(チェロとかが入るのもあります)で、歌曲の方はクワルテート・エン・シーとボカ・リヴリが参加しています。そう男女混声八人コーラスなんです。

 で、このアルバム、もうメランコリックの嵐でたまんないんです。切なくてカウンターの中で倒れ込んでしまうくらいなんです。

 さて、このアルバムを中島ノブユキさんがいる時にさりげなくかけてみました。そしたら中島さん5秒聴いて「ちょっとちょっとこのピアノ誰? 何これ? すごいんだけど!」って言ったんです。「また中島さん?」と思ったあなた、中島ノブユキさんってめったに音楽を誉めたりしないの知ってます? で、こんなに食いついてくるのなんてホントないんです。

 で、これはジルソンやエン・シーの仕事が原因なのではなく、このクラウヂオ・サントロという作曲家がすごいのではと考え始めたのです。


 さて話は変わって、昔、私はWAVEのクラシック売場で働いたことがあったのですが、そこではヴィラ・ロボスってすごく売れる定番商品だったんです。意外ですか?

 ここでクラシックのCDを買う人たちを想像してもらいます。一般的なのはレコード芸術という雑誌を毎月購入して、「フルトヴェングラーの1945年の録音が…」とかって語るタイプです。
 
 しかし、本当に一番多いのは小さい頃からピアノを習っていて、音大に入って今は普通にOLやってますみたいなタイプです。そういう人たちって意外と自由にボサノヴァ買ったり、ジャズ買ったりしながら、クラシックももちろん買っているんです。で、そういう人たちがヴィラ・ロボスを買うんです。

 あと、私は坂本龍一キッズ系と呼んでいるのですが、ドビュッシーやラヴェルから現代音楽なんかを聴くタイプの人たちです。実はこういう人たちもすごくたくさんいて、その人たちは積極的に20世紀以降の全世界のクラシックなんかにすごく興味を持っているんです。

 で、提案なのですが、その人たちに向かって「ブラジルのクラシック」を紹介する本を誰か作ってくれないでしょうか。あるいはもう少し広げて「ラテンアメリカのクラシック」というのもありかもしれないです。キューバとかアルゼンチンのクラシックも面白そうですよね。

 CDも出して下さい。たぶんブラジルにはブラジル人が演奏したブラジル人作曲家のレコードがどっさりと存在するはずです。そのあたりって、宝の山だと思うんですね。

 クラシック好きも動くし、ブラジル音楽好きも動くと思うんですよね。それに興味を示す推定人数は5万人はいます。

 誰かやってくれないかなあ。まずはこのジルソン・ペランツェッタのアルバムあたりから… 

           ●

 さてクラシックつながりで、また雨と休日
の話しです。

 先日、トレフル
というボッサの向かいのお花屋さんでお花を買った(海の日にCayに贈ったあの花です)ら「雨と休日セレクションのCDーR」
を頂きました。これがもうものすごく良いんです。

 クラシックの室内楽曲をまるで3分間のポップ・ミュージック感覚で扱って、ボサノヴァやジャズの静かな曲に混ぜてCDをコンパイルするっていうアイディア、いろんな人がトライしていると思うんですね。でも残念なことにほとんどが失敗しているように私は感じているんです。

 しかしこの「雨と休日セレクションCD−R」はおもいっきり成功しているんです。成功の理由はこう考えます。1.寺田さんがすごくたくさん音楽を聴いている(今ってネットがあるから音楽をたくさん知っている人はいるのですが、ちゃんと聴いている人って逆にいないんですよね) 2.寺田さんの音楽に対する世界観がすごく確立されていて揺らがない 3.センスが良い

 最近はいろんな人が雨と休日の話しをしています。いずれ「雨と休日系」って言葉が出来るねなんて声も聞きました。

 でも、みんなに言うのですが、このお店、ネットじゃ良さは伝わりません。是非、西荻に足を運んでください。

 と言うとほとんどの人たちが「いや林さん、西荻って遠過ぎるよ」って言います。あ、この言葉ってあれだ、鎌倉のディモンシュが話題になり始めた時にみんなが言ってた言葉に似ているなと思いました。

 で、西荻、いろんな骨董屋や家具屋、渋い古本屋や可愛いカフェなんかがたくさんあるのって知っていますか? 休日にそれらを一つ一つ回るっていうのも楽しいと思いますよ。

 雨と休日、わざわざ西荻まで行く価値あると思います。「CDの売り方」のいろんな可能性を感じさせてくれますよ。

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 最後にお店の宣伝です。ボッサ・レコード、新しくレコード入荷しました。もし興味がありましたらのぞいてみて下さい。試聴も出来るし買わなくても楽しめると思います。

 音楽の話しだとついつい長くてすいませんでした。
posted by ベーマイストレス at 15:52| Comment(0) | ブログ

2009年08月04日

The Other Side of Jobim

barquinho ヒガシノリュウイチロウ http://barquinho.biz/

Antnio+Carlos+Jobim.jpg

 「いかにしてボサノヴァ/ブラジル音楽にたどりついたか」シリーズ、今回はやはりこの人のことは避けて通れないアントニオ・カルロス・ジョビンかな。全く脈絡ないけど…。

 ジョビンについては一家言持つ人が多く、いろんなところでその素晴らしさについて語られていて、今さら僕などが解説することは少ないので個人的・主観的なことを書いてみます。

 最初に結論を言ってしまえば、ジョビンがいなければ僕はブラジル音楽を聴いていなかったと思います。ジョビンのモダンなコード進行による数々のボサノヴァ・スタンダードを聴いたからこそ、その圧倒的な独自性に興味を持ち、「ブラジル音楽ってすごい」と感じてその他のブラジル音楽にもはまっていったのです。ボサノヴァやMPBには、ジョビンが作った曲でなくともジョビンの影響があったからこそ生まれた名曲も少なくないでしょう。ホベルト・メネスカルの転調を多用した作風も明らかにジョビンの影響だと思うし、MPB世代の音楽も、ジョビンがいたからこそ生まれ得たものなのではないでしょうか。

 あと、ビートルズ以降のロックを中心に音楽を聴いてきた人間にとって、やはり“自作自演アーティスト”というのは親近感があるし、感情移入しやすいですね。ジョビンは中期以降自分で歌詞も書いていて、ナイーヴな感性を表現した歌詞を書いているし、それを自分で歌った録音も残っている。そんなところも魅力的です。「リージア」や「ヴォセ・ヴァイ・ヴェール」といった曲からは“天才作曲家”の人間くさい一面を垣間見ることができます。ジョアン・ジルベルトの演奏はもちろん比類なく素晴らしいものだけど、自分の感情を吐露するようなことはあまり無いので、そういう意味でもジョビンには親近感を持ちやすいのかもしれません。

 さて、世の中にはジョビンの作品を扱った作品は星の数ほどありますが、本人の演奏・作品のなかではどれが好みかと問われるなら、僕は1973年の『マチタ・ペレ』、1975年の『ウルブ』のあたりが今は好きかな。どちらもクラウス・オガーマンの壮大なオーケストレーションが大きな位置を占めているけど、クールで甘すぎない良い仕事をしています。耳タコと化した有名曲がほとんど入っていないところも良い。そしてこの2作品は独特のダーク感というか、ダウナーな雰囲気を持っているところも好み。

 『ウルブ』を初めて聴いた時のことをいまだに印象強く覚えています。もう15年以上前だと思うけど、京都まで車で買い物に行って(当時は大阪府に住んでいた)当時ブラジリアン・ディスクがバリバリ最強だったヴァージン・メガストア河原町店で『ウルブ』を購入。夕暮れ差し掛かる鴨川沿いの道路を帰路につきながら買ったばかりのディスクをカーステレオに突っ込み1曲目の「ボト」が流れてきた時、車内の温度が1〜2度下がった気がしました。「イパネマの娘」や「ジェット機のサンバ」のジョビンの印象とは全く違うダークな感触に驚いたのですね。ビリンバウの乾いた音、不穏なベースライン、エレピの不協和音、そしてジョビンとミウシャの緊張感のあるデュエット、そして壮大なオーケストレーション。そこにはボサノヴァ的な感触は全く無いけれど、ジョビンにしか作り得ない高密度なブラジル音楽がありました。そして続くスローなアレンジの「リージア」の美しいこと。ジョビンが『ウェイヴ』あたりまでのいわゆるスタンダード・ボサの作曲家で終わっていても、もちろんその世界的地位は揺るぎなかったはずですが、『ウルブ』や『マチタ・ペレ』のような、単に聴きやすいだけじゃないパーソナルな作品があるから、僕はボサノヴァというジャンルを越えてジョビンというアーティストを愛しているのでしょう。

 最後にやっぱりギターのことを書くと、ジョアン・ジルベルトやバーデン・パウエルのようにあまり話題にならないけれど、ジョビンもまた独特の個性を持ったギターの名手だと思います。ジョアンのギターはぶれることのない右手親指の2ビートの上で、高音部がサンバのアクセントを黙々と刻み続ける、あくまでも弾き語りの伴奏に特化したものだし、バーデンのギターは鋭いアタックを武器にパーカッシヴにギターをドライヴさせるものですが、ジョビンはその中間といったところでしょうか。バーデンほどではないにしろ、ジョビンのギターはパーカッシヴで、ジョアンの弾き語り伴奏型よりも自由にリズムを刻み、アクセントが多いです。これはやはりアレンジャー的発想からくるボサノヴァ・ギターのとらえ方だと思うし、アンサンブルの中に入るととてもかっこいいです。彼自身のアルバム『ウェイヴ』や、アストラッド・ジルベルトのファースト『ジ・アストラッド・ジルベルト・アルバム』のギターにぜひ耳を傾けてください。もしかして無意識に聴いてきたこのジョビンのギターが、ボサ・ギターのデフォルトに思えてこないでしょうか。



↑ジョビンのギタープレイに注目!

Ps.若い時のジョビンってとてもハンサムかつおしゃれですよね。才能豊かでハンサムでおしゃれときたら、きっとモテモテだったのではないでしょうか。履いている靴なんかも、ジョアン・ジルベルトと比べても格段にファッショナブル!そんなところもとっても好きなんですが、晩年太ってガラリと印象が変わってしまいました。
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